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2019/06/06

厚生労働省の「所得」の資料で間違いを発見した話

所得分布って知っていますか?

厚生労働省がこんなグラフを出しています。

引用:平成 29 年 国民生活基礎調査の概況

 

ちょっと長いタイトルですが、「所得金額階級別世帯数の相対度数分布」と呼ばれるものです。これを見れば1世帯あたりの年間所得額がどのくらいになっているのか、がわかります。

すると、なんと平均額が560万もあるのですね。すごい金額です。中央値(ここでは詳しい説明は省きますが、上からも下から順番に数えてちょうど50%の値のこと)も442万円となっており、月あたり約37万円の所得をもらっているということになります。

ちなみに、税法上、「収入」と「所得」は違うもので「収入>所得」となるのが普通です。

なぜなら、収入から、経費を差し引いたものを一般的に「所得」と呼ぶからです。サラリーマンではなく、個人事業をやっている(やったことある)方はわかりやすいのですが、収入から多くの経費を差し引き、所得を計算して、その所得に対して税金額が計算されると考えていただくとよいでしょう。

例えば、年収500万(給与のみ)の人は、実は「給与所得控除」という金額を差し引くと、所得金額が算出され、年間所得金額は346万円です。つまり、グラフの中で言えば、世帯平均所得金額よりも、中央値と呼ばれる金額よりもずっと低い額です。

つまり、多くの家庭は年収500万以上は余裕で超えるくらいの額を稼いでいるということなのです。

 

実際に計算してみましょう。

なんと、平均額である所得額560万円を基準にすると、給与額は約750万円になります。

1世帯あたりだと平均額でそんなに稼いでいたのですね!(もちろん、中央値を基準にしても非常に高いことには変わりはありません。442万円の所得になるためには、約620万円の給与(収入)額になります。)

 

本当にこれって所得なの?

・・・と考えてみると、何か違和感ありませんか?
本当にこれって、「所得」でしょうか。

 

な、なんと、実は、ここのグラフにある所得は、「収入」の定義になっていて、間違っています。

社労士、税理士と確認しましたが、「おかしいですね。」との返答。本当かな、と思い、厚生労働省の担当者に直接電話で聞いたところ

「この定義で調査を始めたので、今もこの定義でやっている。」

とのことでした。ということで、定義の欄を見てみると、


 

12 「所得の種類」は、次の分類による。
(1)稼働所得
雇用者所得、事業所得、農耕・畜産所得、家内労働所得をいう。
ア 雇用者所得
世帯員が勤め先から支払いを受けた給料・賃金・賞与の合計金額をいい、税金や社会保険料を含む。なお、給料などの支払いに代えて行われた現物支給(有価証券や食事の支給など)は時価で見積もった額に換算して含めた。


 

となっています。これは明らかに「収入」に近い金額ですね。

ただ、フォローしておきたいのは、一般的な会話であれば、「所得」はほぼ「収入」と同じ意味で使われています。なので、絶対ダメ、というわけではないです。定義もきちんと書いてありますし。ただ、誤解をされやすいのは間違いないです。

 

■一歩先の数字力

〇〇の分野で使われる言葉と日常的な言葉は、違う意味というのはたくさんあります。

例えば、「リスク」という言葉も、一般的な言葉では、「危険」と解釈されることが多いのですが、経済でよく使われる定義だと、「標準偏差(分散)」についていっていることが多いです。

数学用語でも、「適当」という言葉はその一つです。数学で言えば、「適当」は、「適切なものを選ぶ」、という意味でよく使われています。数年前に社内で、文系出身のスタッフに、

「適当にやっておいてください。」

と仕事をお願いしたところ、「適当でいいんですか?」と返され、慌てて修正をしたことがありました(泣)「ちゃんと適切にやろう。」という意味です。決して日常用語の意味でいう「適当に仕事をやれ」という趣旨ではないことを言っておきたいと思います(笑)

同じ言葉でも、分野や領域、その文脈によって、読み取らなければいけない意味、定義の違う言葉はあるので、ちゃんと確認することが大事ですね。

 

■参考URL

給与ねっと ⇒ 給与と所得の金額の計算に使えます

平成 29 年 国民生活基礎調査の概況
 ⇒1世帯あたりの年間所得分布があります

 

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